一、
花散る丘を越えて来し
眼に見はるかす茫洋の
水門ぞ潮にかぎろへる
朝日の栄を胸にしめ
己が足音の高きかな
己が足音の高きかな
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二、
葉ずれも硬き夏草に
追いしは夢の跡ならず
青炎ゆるる夏空の
深きに耐えて立つ時は
我こそもゆる焔なれ
我こそもゆる焔なれ
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三、
水雲淡き丘の上
木犀の香はただよへど
若き思ひは告げやらね
友と落暉の影ひけば
憂愁いよよ深きかな
憂愁いよよ深きかな
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四、
朔風天に落つるとも
寒の星座はゆらめかず
理智の光さすところ
真夜をこめたる思索をば
弧影寒しと誰かいふ
弧影寒しと誰かいふ
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