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■ 故白石名誉会長の教えを振り返って 23回生 菅 敏喜 | 2025. 5.21 |
11年前に第22回卒業式の同窓会長祝辞が音声ファイルでアップロードされ、感銘を受けたので文字起こししテキストファイルを投稿させていただきました。 初見でもその格調高さに感銘を受けたのですが、今聞き直すと先生の世界観や教育論、視野の広さは特筆すべきで、その教えを皆様と共有させていただきたく本文を投稿させていただきました。 先生のご経歴は旧兵庫縣立第二神戸高等女學校 (現兵庫県立夢野台高等学校)を3回生としてご卒業され、実践女子大に進学された後に幼稚園から大学までの教育現場で教鞭を取られ、その功績により勲5等瑞宝章を受章されています。 スピーチは卒業する高校生に向けて自らの存在と卒業式の意義を述べられています。さらに、当時のトピックスである月面着陸や万博について触れられ、科学の進歩により顕在化した人間性の回復と教育の問題へと転じられています。そして、イギリスの大学における教育目的や我が国の江戸時代における藩校の教育目的が一部の支配階級の人間を教育することを目指していたことを指摘して、今の大学が目指すべきことは個人に何を与えるかに価値が問われ、教育の目標は人格を作る事、心を育てる事でなければならないと述べられています。さらに、現代社会の悩みの一つに学者、政治家、労働者の中に蔓延る断層について危惧されており、それを埋めるのはお互いの信頼関係に掛かっていると述べられています。そして、ユネスコ憲章の平和な世界は心の平和が必要との一説を取り上げ、インドのノーベル文学者タゴールが愛した物欲に囚われず人格の統一と穏やかさを思慮する東洋の智恵を日本人の生きるという生命の価値こそが求めるべき答えではないかと述べられています。最後に、卒業していく人達に目指すべき道は世界に役立つ日本の一員として何らかに関与し、努力を続ける事だと諭されています。 この様に広い見識と高い理想を持たれ、母校を巣立っていく後輩達に一筋の光を照らして導かれる貴重なスピーチを送られています。 自分の高校生時代を振り返ると、この様な高邁な考えは微塵も無く、周囲に流されて志望動機も曖昧なまま大学へ進学し社会に出ると言う生き方をして参りました。当時の私は目指すべき道など考えたことも無く、その様な精神的教育も受けたことが無かったので、心は未成熟のまま身体だけが成長して社会人になったような気がします。18歳の私が先生の薫陶を受けていたなら確実に違う人生を歩んでいたことが容易に想像できます。 翻って、18歳の若者に未来を展望できる視野を持つように導く教育とは何なのか考えさせられます。現代は自我の欲求を満足させるだけの行動が多い様に思われます。世界の為、人類の為、他人の為と言った崇高な目標を持つことは不遜なのでしょうか。 具体的には、例えば、医学の道を目指して難病を克服するとか、科学の道に進み人類の到達していない領域を切り拓くとか、政治の世界に歩み出て世の中を変えると言う様な計画を立て、それを実行する為に、今、成すべきことは自分を高める事であると理解し目標を決るように指導すれば、勉学が苦にはならず、自ら進んで努力できるようになるのでは無いでしょうか。教育者でもない私が言うのもはばかれますが、一言私見を述べさせていただきました。 令和7年5月20日・記 23回生 菅 敏喜 |